名司会者

 年末のテレビで阿久悠さんの作詞家40周年記念の特番が放送された。実に良かった。西田敏行の司会が最高。彼とは歳が同じなのでこれまで親近感を覚えてきた。
色っぽい男・沢田研二のコーナーが特に印象に残った。客席から拍手が沸くなかで西田が「ハイッ、どうも。全国のジュリー・ファンの皆様、長らくお待たせいたしました」と発する。そのとき、彼が格好つけて身構えるように体を少し揺らせながらお笑い芸人の感じで言うのに僕は痺れた。脇にいる若い女のアナウンサーが「ハイッ、沢田研二ヒットパレード・パート2」という間にも、西田は「ウーン」と唸っている。その体の様は格闘技プライドで対戦者同士が試合前にリング上で闘志を漲らせてやるあれと同じだ。バンダレイ・シウバなどは手をこまねいて体を小刻みにくゆらせているでしょう。女のアナウンサーが「1970年代を飾った名曲をたっぷりとお楽しみ下さい」と続けると、西田は「ジュリー」と口を尖らせて爆発する。歌舞伎の「山城屋」とか「成駒屋」と掛け声をかけるのと同じだ。感極まっている。その次のピンクレディのコーナーでも「ピンクレディ」とダイナマイト的な調子で発する。
そこが気に入って家内にビデオを見てくれるように言ったが「別にどうってことない」と素っ気なかった。僕の感覚がズレているのかなあ。「ニシダッ!」…。そう、彼はガニ股のデブだ。そこもまたいい。