変わり身

 僕は基本的にはプロ野球のファンではないが、最近なにかと気に懸かる。“変身”と“ヒーロー”いう意味において。小学六年生のころだったかな、長島茂雄坂東英二の対決を観た。中日球場の外野席だった。二人をその時きちんと認識していたわけではない。しかしちゃんと記憶している。隣の席のオジサンの罵声が今でも耳元に聞こえて来る。「長島!お前なんか坂東の十分の一の力しかないんだぞ」。長島が千葉の背番号「3」を受け継ぎ、颯爽とデビューしたのは知っていたが坂東のそれが「30」だと知ったのは後になってだ。
 時が流れ二人の姿はそれぞれ変わった。長島については書かない。坂東は口八丁のなんでも来いで多方面に渡って活躍している。プロ野球出身者で最も成功した一人と評する人もいる。ヒーローになったわけだ。                       
話が少々変わって恐縮ですが…。僕は子供の頃から映画が好きで一杯観た。お祖母ちゃんに連れてって貰った。映画のなかにはいつもヒーローがいる。片岡千恵蔵の「多羅尾伴内」、大友柳太朗の「怪傑黒頭巾」あたりからだろうか。所謂・変身物に出会うのは。これは歌舞伎からの流れだと考えている。さらに考えてみると、ほとんどの作品が変身物である。いちいち例は挙げない。但、スーパーマンバットマンといった米国の作品もその種だと確認しておく。                              
プロ野球なぞ僕の実人生になんの関係もない。たとえヒーローの星野仙一氏が巨人軍の監督に転身(進)しようがしまいが…。映画の中の狂言に出てくるヒーローへの変身の方がよっぽど面白い、僕にとっては。