法相舌禍事件

 新たに法務大臣に任命された杉浦正健(せいけん)氏の発言が物議をかもした。死刑制度に対する疑問を述べ、自らの信条から死刑執行命令書へのサインは行わないと明言したのだ。しかし、その1時間後にはその発言を撤回した。朝令暮改とはこういうことを言う。
 死刑確定者が独居房の中で歓声を上げたのも束の間、すぐに悲鳴に変わったという皮肉めいた話が新聞に出ていた。
 国際的な状況では死刑は廃止の流れにある。昔、祖父が生きていた頃フランスで死刑が廃止されたとのニュースがあった。祖父は無学に近い。日露戦争の時の兵隊検査で知能指数が足りないので不合格(補充兵)になった。漢字で「仏」と出ていたので、お祖父ちゃんは「ホトケの死刑廃止」と読んだ。周りの皆がどっと笑ったのを憶えている。
 今回の杉浦法相の舌禍事件。結局、地位は欲しい、死刑廃止が持論だという虫のいい彼の姿だけが残ったような気がする。個人の思想信条はともあれ、職務なんだから死刑の判子は押さなければならない。