紙くずと札束

 ♪シャボン玉飛んだ、屋根まで飛んだ、屋根まで飛んで壊れて消えた♪…。ライブドア関係の一連のニュースをテレビで見ていてそう感じた。21日付の朝日新聞朝刊。ウィークエンド「私の視点」欄で経済評論家の内橋克人氏が次のように書いている。
 …買い注文と大量の株券印刷との間の時間差を突いて株価を引き上げる。さらにファンド(投資事業組合)を利用することで、同じ株式大量取得時にも、一企業の場合に比べて情報開示の時期をおくらせることができる。90年初頭、米国においてさえ、「血に飢えた鮫」「紙くずを札束に変えた狐」とウォール街でも蔑称されたレバレッジド・バイアウトLBO)の発明者、マイケル・ミルケンを彷彿とさせる…。
 堀江流錬金術のばけの皮が剥がれてきた。よくテレビに出演しているライブドア広報担当の乙部綾子さんが言っているように、「彼らが悪意を持ってしたことではない」と、私も思っている。今後、堀江氏が逮捕されるに至ったとしてもだ。唯、きちんと理解しておかなければならないのは、いつの時代にも実体(物の面)から離れてお金の部分だけが膨張する経済現象はいつか破綻するという点だ。
 最近はインターネットで誰でも簡単に株取引ができる。デイトレーダーなんて言葉も頻繁に使われている。私は株については無知だが、思うに、それは例えば、100人の株に関わる人間がいるとすれば、そのうちの1人が大きく儲けて残りの99人が損をする。単純化して言えばそういうサークルなのではないか。だが、考えてみれば、いくら競争社会の勝者だといえ、20代・30代の若輩者が巨万の富を掴むのは不自然といえば、その通りだ。
 内橋氏は「マネー・ゲームのつかの間の勝者に国民の敬意を凝縮させるような政治ではなく、労働の正当な報酬とは何かを明示できる政治こそ、21世紀日本のものでなければならない」と、結んでいる。