爪の垢

 「いゃあー、驚いた」。年中無休のサービスと徹底した合理化、茨城県矢祭町役場の仕事ぶりである。今時の日本に、こんな素晴らしい公務員の方々がおられるとは…。先日、朝のテレビで紹介されているのを偶々見た。
 フレックス・タイム制で職員1人が3人分働いている。トイレの掃除まで自分たちでやっている。町長の根本良一氏は「当たり前のことをしているだけ」と、平然と構えておられる。同町長は自分の報酬にまで手をつけた。これまで月額77万円だったが53万円に減らした。この町は2001年に「合併しない宣言」を打ち出している。合併は過疎化につながるというのが、その理由である。根本町長は2003年に引退を決意していた。しかし、町民が挙って「もう一期お願いします」と懇願したため、「4年間の任期は非常に重いが、みなさんの話を深く重く受けとめて行くところまで行く」と、引き受けた。そして、企業誘致にも成功した。今後、町がいちばん力を入れていくのは少子化対策だそうだ。第3子が誕生した家庭には100万円が支給される。ここ数年、下がり気味だった出生傾向に歯止めをかけた。「矢祭町にお嫁に来て、住んで良かった」。また、「この町は町長さんが立派だから全国一です」といった声が町民の間から起きている。町長さんの人望は厚い。本当の意味の地方分権をこの町が実践している。
 安易に合併して経済効率だけを追求していく地方自治の在り方は、どこか偽っぽい。既得権の上にあぐらをかき税金を無駄使いしている例をしばしば見聞きする。そんなお役人たちには根本町長の“爪の垢”を煎じて呑ませてあげたらいかがでしょうか。