犬を飼うこと(後編)

 犬はもともと危険です。いつなんどき怒り狂い、その本性を暴露するか分かったものではありません。少しの油断もあってはなりません。世の多くの飼い主は、日々食物を与えているだけで心を許しています。名前を気楽に呼んで、さながら家族の一員のごとく身近にしています。幼子に犬の耳を引っ張らせて大笑いしている光景などを目にすることもあります。私は気味が悪い感じがするのです。不意に、「わんっ」と吠えて噛み付いたらどうするのでしょう。
 2、3年前に娘が「犬を飼いたい」と云ったことがありました。世話が大変だからといって家内とともにその申し出を断りました。今、私が犬を飼うなどと云ったら、娘が「お父さん、犬は嫌いだと云ったじゃない」と言われるに決まっています。やはり、犬を飼うのは止めます。そして何か外のことで、目を休めるための自然の散歩状態を作るのがよさそうです。とにかく、私は犬が恐いのであります。