学歴と教養について

 日本人の従来型価値観、つまり有名大学を出て一流企業に入る。あるいは医者や弁護士などの専門職に就いて高収入を得る。団塊の世代である僕が生きてきた戦後、大体このような考え方が支配的だった。
 そこで“従来”とは一体、何時からか自分なりに考えてみた。福沢諭吉さんは、その著「学問のすゝめ」の中で「唯学問を勤めて物事をよく知る者は貴人となり、富人となり、無学なる者は貧人となるなり」と云っている。侍階級が無くなり明治時代に西洋からいろいろな思想や文化が日本に流入して以来、「学歴社会」が始まったと思う。その後、ソニー盛田昭夫さんの「学歴無用論」が流行った時期もあった。内容は学力必要論であったが…。
 さて今の時代、求められているのは学力に加えて、教養とコミュニケーション能力だと云われる。以前、ラジオの人生相談番組で評論家の山谷親平さんが云っていた。「教養とは思いやりだ」と。最近、僕にはなぜかこの言葉が耳に引っ掛かっているのである。